点子がゆく

映画や自転車や温泉の話をするブログです。

東京物語

原節子さんが95歳で亡くなった。
BSで追悼放送で「東京物語」があった。
好きな作品で何度も観ているが、久しぶりである。

何が好きかと言われても分からないが、学生時代はじめて、京橋のフィルムセンターで観た時、よくわからない安心感、満足感に満たされた。

子どもたちが成人し、嫁をもらい、久しぶりに観た。

今回は東山千栄子さんがよく目にとまった。
笠智衆さんのとおうむ返しのようなセリフのやり取り。
セカセカと日常を過ごす私には、ゆっくり喋る東山千栄子さんが輝いてみえた。
5人の子を育て、昔は大酒を飲んで困らせていた笠智衆さん扮するお父さんを支えていた。

長女の杉村春子さんはしっかり者でシャカシャカしてる角張った性格。
着てる浴衣の直線的な模様が多い。

山村聰さんの長男は、優しいのか優しくないのか分からない長男らしい。

戦死した次男の嫁の原節子さんは嫁らしく舅、姑に気配りできるいい人。
仕事を休んで東京観光に連れて行ったり、
出前のカツ丼を舅、姑にまず食べてもらう。自分は丼はそのままで、団扇を仰いでいる。
急に来た姑ち泊まらせ、帰りに
「少ないですが」
と、こずかいを手渡す。
東山千栄子さんは原節子さんに
「紀さん、紀さん」
と信頼し、慕っている。

子どもたちが招待した熱海旅行。
夜中まで騒ぐ若者に、ゆっくり休むことができずにいたが、長女には
決して愚痴らずにいる親心。

所作やセリフが美しい映画。


なんやかやで業者さんが実家にくるため、実家で過ごした休日の午後に、久しぶりに親と観た。

「寒くなったね」

と、暖房を入れるとルーバーが開かない。
家電のお客様サービスに電話して、東山千栄子さんの危篤からはよく観ることができなかったが、
「そんなにいい人でないのよ」
そう、原節子さんが言うセリフが聞こえた。
はじめて東京物語を観た時、痩せた父親、ふっくらした母親、子どもの多さなどから、なんとなく母親の実家にだぶってみえた。

そんなことを母親に言ったことはない。
自分が親になり、老親と実家で
観る小津安二郎さんの「東京物語

それだけでも意味のある、冬の日の午後。