点子がゆく

映画や自転車や温泉の話をするブログです。

恋人たち

f:id:tenkochaniine:20151114174753j:image3人の主役の役者さんがいい。

一人目。小太りの男。

「〇〇けん」と語尾にけんをつけるのが、大分県民かな?
通り魔に妻を殺されたなんて、ありえない設定とおもっていたが、
観ていて彼のかなしみ、やるせない気持ちの持って行き場のなさが身にしみる。

1時間2万円の弁護士に相談しても、それも5人。
それでもどうすることもできない、
仇を討ちたくても、
犯人に報復したくてもできない悔しさ

唯一の救いが、殺された妻の姉。
このひとがまたいい。
不器用な性格、決して美人でない彼女のかなしみは同じ遺族として、彼と気持ちがオーバーラップする。
まるで、彼の心を慰めるように、泣いてくれる。

それでもやはり癒せない彼のかなしみ

結局、救ってくれたのはひとの愛情。
彼の上司。
仕事を休んだ彼にビールと弁当を差し入れに来る。
犯人を殺したいという彼に、
上司はどんな言葉かけするかきいていると
死んだら会えなくなる、
死んだら話すことができなくなる
そんなニュアンスのことを言う。
愛情満ちた言葉掛け。

さりげなく、気にかけてくれる
話を聞いてくれる

彼はもう救いようのないままなのかと思っていたが、

うるさい同僚も愛おしく見えるようになる

ゴミ山のように乱雑だった部屋が片付けられ
窓から新しい風が入り
遺骨に希望の黄色い花束が飾られる

ひとはひとに傷つけられるが、
ひとはひとの愛に救われる


二人目。お金のなさそうなダサい主婦。
自転車で生活をこなすのがおばさんぽい。
彼女がテレビ画面で観ているのは雅子さまを見学に行った自分と友だちの動画。
何度もなんどもみる。
自分がときめいていた時だから

彼女には画面から視線を逸らすと、義母との同居生活、弁当作りのパート、
夫との一方的に見えるSEX(嫌じゃないのかな)
パッとしない人生。
どこにでもいそうなおばさんがよく似合う。

そんな彼女をワクワクさせたのは見知らぬ男と野っ原で鶏を追いかける。
その姿のなんと楽しそうな映像。
イキイキとトリを追いかけている彼女。
よほど嬉しかったのか、夕餉の席で饒舌に話す彼女。
調子に乗り義母に意地悪を言い、夫からの反逆をくらう。
言いたくなる彼女の気持ちになるような、つまらなそうな日々がよくえがけている。
こんな人、いそう。
こんな生活ありそうな家の中。
こんなにありそうに荷物が雑然と置かれている姿、素晴らしい。

光石研もいつもよりダサく、名の知れた俳優らしさが、微塵もなく、目の周りがフツーの人っぽい。

このどーしようもないのこの男につかまる、アホな女。
一本1万円の美人水を鵜呑みにするおバカさん。
 そんな彼女が雅子さまでなく、目の前の男が自分をワクワクさせてくれた。
 
今の生活を捨てて男に走る。
男の家で見たものは、ヤクに溺れる男。
男は注射を打とうと、腕を縛って血管をだそうとする。
タオルでするが、だめ。
パソコンのコード、しまいには女の履いているストッキング。
縛るに縛れない男の子演技が異様に上手い。
あまりに縛れず、男の哀しさが漂う。
そんな男のそばで、女はなぜか自分の話をする。
早く帰りなさいと言いたくなる。

結果的に何もないように、家族のもとで
いつものように自転車で生活する。
自転車乗ってる姿が、いいね。

3人目。ゲイの弁護士。
彼は他の二人みたいに愛すべき人物にはみえない。
傲慢な、自分勝手な奴。
そんな雰囲気がプンプンする。
弁護士だから頭はいいんだろうが、ひとを思いやる心がうすい。

でも彼は彼なりに恋人や学生時代からの好きだっ彼との別れから
離れてはじめて大切な人だったとわかる。
そんな彼は一から人間関係を築きあげるしかないなぁ。



映画は罪人をえがいても、罪を肯定しない。
絶望的な人をどうえかくのかと思って観ていた。

すくいのあるラストで、私も救われた。







f:id:tenkochaniine:20151114174728j:image