点子がゆく

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独裁者と小さな孫

f:id:tenkochaniine:20160131230021j:image今年の傑作の1本‼️
テンポがいい。

まるでアジアのどこなの国みたい。
幹線道路の屋根に不必要なくらいの街の照明の帯。ずーっと続く光の帯の先に見えたのが宮殿。

そこにいるのは大統領とその孫。
電話一本で町中の照明を点けたり消したりと  なんという暴君ぶり。
ワガママを言う孫に親のように接しながらも大統領の権力の凄さを見せつける。

あっという間にクーデタになり、孫と二人、追われる身になる。

逃亡中、大統領は悪なのに変装が見破られないかハラハラしてしまう。
 
逃亡のためなら、略奪あり強盗あり、もちろん嘘もあり。
国家権力を牛耳ってきた彼の人生と同じ方法で逃亡を手助けする。

逃亡中にであった人々。

印象的なのが、五年も刑務所に入れられた男。
自力で歩けないほど虐待された男。
「妻の存在、支え」で生き延びたと言う。
自宅が近づくと、支えの手をほどき、自力で這って進む。

画面ではずっと彼のアップが続く。

玄関のドアが開き、妻とのやりとりがBGMになる。

赤ん坊の泣き声。自分が牢屋に入れられているはずにできた子。
計算が合わない
そして、
妻から再婚を告げられる。
再婚相手らしい男の声。
悲しみのあまり鋤で自殺する。
生き延びたのは最愛の妻の愛があったから、
と、信じていたのに。

投獄された人は彼自身だけの人生でなく、彼の家族の人生の歯車も狂わす。

大統領がまだ若かりし時に出会った娼婦のマリア。

彼女が訴える。
兵士は彼女の身体を通り過ぎてもお金を払わないと。
姉が投獄され、大統領に助けを求めても無視されたと。
しかし、大統領のヘルプの手助けをし、まるで聖女。

たくさんの出会いの中、
報復には報復を戒める人がいた。

報復しても何も生まれないことはわかっているが、身内を殺されたものは理屈に感情がついていかない。

ラストをどう捉えるか、自分なりに整理するが、自身がその場にいたら正しいであろう行いができるか自信がない。


幼いおさない孫の疑問、シンプルな質問が大人たちに問いかける。

おさない孫にとって、大好きなマリアと一緒にいたい
それだけが望み
それは投獄されたり、拷問されたり
独裁政治で苦しめられた国民も同じこと。